ブナ(橅)

別名 シロブナ
科属  ブナ科ブナ属
学名 Fagus crenata

性状
落葉高木
葉の分類
互生、単葉、広葉、切れ込みなし、鋸歯あり
類似
備考

参考: 葉っぱでおぼえる樹木(柏書房)/日本の樹木(山と渓谷社)/樹に咲く花(山と渓谷社)

樹形


09.09.26赤羽

樹木解説

高さは約30mになる。樹皮は灰白色で滑らか。葉は互生し、長さ5-8cmの卵形あるいは広卵形で質はやや厚く、基部はくさび形。ふちには波状の鋸歯がある。側脈は7-11対。裏面は淡緑色で脈上に毛が残る。花は5月頃、葉と同時に開く。雄花序は6-15個の雄花が頭状集まり垂れ下がる。雌花序は2個の雌花からなり上向きに咲く。類似のイヌブナの方が葉は大きく、側脈は10~14対。イヌブナは数本の幹が立ち、主幹が枯れると別の幹が成長し主幹となる。また、イヌブナは若葉にある長い白毛(特に裏面の葉脈に沿って)が残る。

09.09.26赤塚植物園

09.09.26赤塚植物園

09.09.26赤塚植物園

09.10.17林試の森公園

2016.2.1青森県酸ヶ湯

10.05.08赤塚植物園

10.11.06奥多摩数馬

10.11.06奥多摩数馬

小説の木々

一刻のちに万騎峠を通り抜けた。一抱えもあるぶなの巨木が一本立っていたほか、目立つものとてない、さびしい山のなかだ。木の間がくれに浅間山が望めた。雲のような噴煙がたなびき、空には雁の群れが飛んでいた。浅間山がそれほど高く見えなかったのは、こちらも負けないくらい高く昇ってきたからだ。(「待ち伏せ街道」志水辰夫)

栄二郎は村の奥山をひとりで歩いていた。里の積雪はまださほどではないが、さすがに山中はカンジキが必要だった。すっかり葉を落とした一本のブナの巨木の前で足を止める。大人の腕でも回りきらない灰白色の幹が、空に向かって真っ直ぐに伸びていた。テマカを外した掌でブナの肌を叩きながら、栄二郎は満足して頷いた。周囲を見回して、見つけたブナの位置を頭に刻み込む。(「川崎船」熊谷達也)

背後には山裾がなだらかに迫っている。遠い昔に植林された杉山が、刈りそこねて自然に還ったように思えた。目を凝らせば紅葉や橅の広葉樹も育っていて、きっと秋にはみごとな錦に織り上げられるのだろう。(「母の待つ里」浅田次郎)