ヤマザクラ(山桜)

別名
科属 バラ科サクラ属
学名 Prunus jamasakura

性状
落葉高木
葉の分類
互生、単葉、広葉、切れ込みなし、鋸歯あり
類似
備考

参考: 葉っぱでおぼえる樹木(柏書房)/日本の樹木(山と渓谷社)/樹に咲く花(山と渓谷社)

樹形


16.03.26新宿御苑

樹木解説

日本の野生桜の代表。高さは15-25mになる。樹皮は暗褐色。新芽は赤、茶、黄色、緑など変異が多い。成葉は長楕円形、卵状長楕円形または卵形で長さ8-12cm。ふちには細かくて鋭い鋸歯がある。3月下旬ー4月中旬、直径2.5-3.5cmで白色または淡紅白色の花が散房状に2-5個つく。雄しべは35-40個。花弁は5個で円形または広楕円形。萼筒は長鐘形で萼片は全縁。果実はほぼ球形で5-6月に紫黒色に熟す。

10.04.08小石川植物園

12.04.09上福岡

10.04.08小石川植物園

12.04.09上福岡

樹名:群桜(ムレザクラ)
学名:Prunus jamasakura Sieb. ex. Koidz. cv. Nitida

14.03.28小石川植物園

14.03.28小石川植物園

14.03.28小石川植物園

樹名:薄毛山桜(ウスゲザクラ)
学名:Prunus jamasakura f. pubescens
特徴:葉の一部に毛を散生する

14.04.05筑波実験植物園

14.04.05筑波実験植物園

14.04.05筑波実験植物園

樹名:長勝院旗桜(チョウショウインハタザクラ)
学名:Cerasus jamasakura ‘Choshoin-hatazakura’
特徴:花は大きく、一重咲きの花に雄しべの一部が花弁状に変わった旗弁を生ずる

17.04.10花と緑の振興センター

17.04.10花と緑の振興センター

17.04.10花と緑の振興センター

小説の木々

夏になれば緑がいっぱいで蝉の声が降ってくるような場所なんだろうけれど、今はまだ春にさえ遠慮をしている。谷間のむこうで一本だけ咲く始めたやまざくらはもちろん人間が植えたものではなく、花の季節以外は桜と認識されることはない。(「薄情」絲山秋子)

この年、扇野の桜は見事な花を咲かせ、特に花見に出るわけでもない紗英ですら、遠くに見える山の中腹に霞がかかったような山桜を目にし、風にのって花びらが舞い散るのを見るたび、心がなごんだ。やがて生まれてくるわが子に、この世の美しさを見せてやることができると思うだけで、嬉しさが胸にあふれ、目にふれるものすべてが輝きを放っているようにさえ感じられる。(「はだら雪」葉室麟)


空と海の隔てが霞む、晴れ渡った朝だった。ひとつ、ふたつ、みっつー桐谷主水は頭上に花開く桜を胸の内で幼子のように数えた。見上げる顔に花びらが二、三片舞い散ってきた。城内の潮見櫓のそばには一本の丈高い山桜が植えられている。細い枝に咲いた遠目に白く見える淡々しい色の花が春霞む青空に映えていた。(「陽炎の門」葉室麟)

相川橋の袂で、二人は車から降りた。霧は山から湧いて谷ぞいに下ってくるのだろうか。あたりは冷えびえとして、朝の光も届かなかった。濡れた土手の上に祠があった。朽ちた屋根を蓋うように純白の山桜が咲いていた。(「母の待つ里」浅田次郎)