樹木解説
葉は5~7裂する。7裂する葉を「イロハニホヘト」と数えたことからイロハモミジと呼ばれる。高さは10-15m、大きいものは30mになる。樹皮は淡灰褐色。葉は対生し、直径4-7cmで掌状の5-7裂する。裂片は披針形または広披針形で先は尖りふちに重鋸歯がある。4-5月、本年の枝先の複散房花序に直径4-6mmの暗赤色の花が垂れ下がってつく。雄花と両性花がある。花弁と萼片は5個。雄しべは8個で、両性花では短い。翼果は長さ約1.5cmで斜開またはほぼ水平に開く。
08.10.31五反田 |
14.04.14森林公園 |
16.04.23花と緑の振興センター |
15.05.09新宿御苑 |
09.05.09新宿御苑 |
09.10.31宇都宮 |
09.11.01宇都宮 |
11.10.17広島県帝釈峡 |
補足
モミジとカエデ |
||
(1)モミジもカエデも植物分類上はカエデ科(APG体系ではムクロジ科)カエデ属で、モミジはカエデの一種 (2)元来、葉の切れ込みの数や深さで「モミジ」と「カエデ」が識別されているわけでない (3)盆栽界では、イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジなど葉が5以上に深く切れ込んで掌状のものをモミジと呼ぶ |
||
モミジ | カエデ | |
語源 | ベニバナなどから染料を揉みだす動詞を「もみづ」といい 染みだすように草木が色付いた様から「もみぢ」 |
葉形が蛙の手の形に似ている とこから「かへるで→かえで」 |
特徴 | 掌状5-9深裂、切れ込みが深い | 切れ込みが浅い |
該当種 | イロハモミジ、オオモミジ、ヤマモミジ | ハウチワカエデ、オオイタヤメイゲツ、 コハウチワカエデ 他 |
小説の木々
独りになると、壱岐は飲み残したグラスの水割りを一気におし流した。咽喉に焼けつくような熱さを覚えながら、壱岐の瞼に、千里とはじめて出会った八年前の雪の三千院の庭が、思いうかんだ。暗緑色の杉苔の上に、雪が白い天鵞絨のように降り積り、葉を落した楓の大樹の枝は雪に凍りつき、氷の花が咲いているようであったが、千里は庭園のすぐ横に迫った比叡山を身じろぎもせず、仰いでいた。(「不毛地帯」山崎豊子)
「ねえ、足湯に浸かって待たない?」陽子の提案に異存はなく、僕らは用意された下駄を引っかけ、中庭に出た。緑の葉を茂らせるかえでの並ぶ小路を進む。木々の隙間をぬって吹きつける風が心地いい。蝉の鳴き声を聞きながら、敷かれた玉砂利を踏むたびにシャリシャリと小気味よい音がする。(「ひとごと/親子ごっこ」森浩美)
「このままでは、さっぱり気持ちが晴れぬのでな」色づきはじめた庭のイロハモミジに目をやって、克巳は言葉を足した。「思い切って、世津殿を静山祭に誘うことにした」・・・克己はイロハモミジから目を戻す。(「つまをめとらば」青山文平)
その日も柳原の晩秋には珍しい暖かな陽気で、藤兵衛の背後の障子がわずかに開けられている。隙間からはよく手入れされた庭がのぞき、わずかに残ったイロハモミジの葉の赤を、北の真っ青な空がいやが上にも際立たせていた。・・傍らに立つイロハモミジの葉がまた一枚散って、三人が座す茣蓙に舞い降りた。(「かけおちる」青山文平)
ふと、枝先から赤く染まり始めたイロハモミジに気づき、足を止める。飼い犬を優しく撫でるような手つきで、そっと遊歩道に差し出されていた枝葉に触れた。道沿いのベンチに座っていた僕も、誘われるように木々を見上げる。オープンカフェの屋根のようにせり出した枝。暖かな色の染まった葉が重なり合い、画家のパレットのように多彩な優しい色を作っていた。その隙間を縫って降り注ぐ陽光も当たり前のように優しい。(「雪には雪のなりたい白さがある/メタセコイヤを探してください」瀬那和章)