ヤブツバキ(藪椿)

別名 
科属 ツバキ科ツバキ属
学名 Camellia japonica var. decumbens

性状
常緑低木
葉の分類
互生、単葉、広葉、切れ込みなし、鋸歯あり
類似
備考

参考: 葉っぱでおぼえる樹木(柏書房)/日本の樹木(山と渓谷社)/樹に咲く花(山と渓谷社)

樹形


12.04.05森林公園

樹木解説

高さは大きいものは10-15mになる。樹皮は灰色で灰白色の不規則な模様があり、なめらか。葉は互生し、長さ5-12cmの長卵形で厚くて硬い。表面は濃緑色で光沢があり、裏面は淡緑色。ふちには細かい鋸歯がある。主脈は表面でへこみ側脈はあまり目立たない。2-4月、枝先に赤色の花が1個ずつ咲く。花弁は長さ3-5cmで平開しない。雄しべは多数あり花糸の下半部は合着して筒状になる。花糸は白色で葯は黄色。子房は無毛で花柱は3裂する。萼片は5個。さく果は直径4-5cmの球形で果皮が厚く熟すと3裂し暗褐色の種子を2-3個だす。

08.11.02上福岡樹皮は滑らか

08.11.02上福岡葉は楕円、長楕円、卵状楕円形

09.06.24西葛西

09.02.21唐津

15.02.15神代植物公園佐渡の藪椿

12.01.06小石川植物園

12.01.06小石川植物園

12.01.06小石川植物園

15.02.15神代植物公園紅司

13.02.09神代植物公園蝋月

13.02.09神代植物公園紅妙蓮寺

14.04.19東京都薬用植物園肥後椿

小説の木々

東慶寺は山ノ内村にある。今日の行先の扇ガ谷村の佐助ガ谷とのあいだには、伏せた擂鉢のような丘があって、なにごとにも大袈裟にいうのが好きだった鎌倉武士たちが、高さ二百七十尺(約九十米)のこの丘を、山と呼んだ。源氏山の名物はいろいろだが、この時季ならだんぜん藪椿だ。春を孕んでもえぎ色にけむったところへどっと紅をぶちまけたように五弁の花を咲かせていて、全山まるで名人が描いた絵のよう。そっくり切り取り表具屋に屏風に仕立てさせ、いつまでも座敷に飾っておきたいくらいである。(「東慶寺花だより」井上ひさし)

ふと、不安な心持がして、わたしは思わず窪地の端に駆け登ったのです。行ってみるとこんもりとした藪になっていて、一面に濃い緑が広がっていました。一ヶ所だけ赤い物が目に入り、近づいてみると一輪の藪椿でした。藪椿がなぜ一輪だけ咲いているのか、不思議でした。わたしは呆然と立ち尽くして、いつまでもその藪椿を見つめていました。(「霖雨」葉室麟)

逆光になった岬の先端部は、常緑樹が分厚く茂っていて、黒々と影を刻んでいる。藪が開けると、山の根元だった。右側に穏やかな海が見える。崖下を覗きこむと、ぬめるような深緑色をした水が、ゆっくりとうねっている。正面は、燃え上がるような紅をちりばめた森になっていた。藪椿の群落だ。重なり合い、分厚く茂った葉の間に、そして落葉の積み重なる地面に、まるで春の女神が気紛れを起こしたように、金のしべも鮮やかに紅の花が、ばらまかれている。こんな北の地に、椿の森があるとは、思いもよらなかった。(「聖域」篠田節子)

上半分がガラスになっている両開きの古い扉には、左に「ツバキ」、右に「文具店」とある。文字通り、家全体を守るように、入り口に大きな藪椿の木が生えている。・・・もしも私がすべてを放棄してしまったら、すぐにこの藪椿の切られてしまう。子どもの頃から好きだったこの木だけは、どうしても自分の手で守りたかったのだ。(「ツバキ文具店」小川糸)