サザンカ(山茶花)

別名
科属 ツバキ科ツバキ属
学名 Camellia sasanqua

性状
常緑高木
葉の分類
互生、単葉、広葉、切れ込みなし、鋸歯あり
類似
備考
園芸品種も多い

参考: 葉っぱでおぼえる樹木(柏書房)/日本の樹木(山と渓谷社)/樹に咲く花(山と渓谷社)

樹形

23.11.16ふじみ野市

樹木解説

葉はツバキと見分けがつきにくいが、葉はツバキのほうが大きく、ツバキよりつやがない。花はツバキは花ごと散るが、サザンカは一枚一枚花びらが散る。おしべはツバキは雄しべが冠状につながっているがサザンカはばらばらである。サザンカと椿(春咲きの一般種)との顕著な違いは「毛の有無」、サザンカにのみ子房と新葉の葉と枝に微毛がある。また、果実に毛がなくてつるつるしていればツバキの実、毛があってざらざらしていればサザンカの実である可能性が高い。

08.10.31五反田

08.10.31五反田

08.10.31五反田

09.07.25新宿御苑

09.09.26成増

09.11.01宇都宮

09.11.09分倍河原

09.11.28上福岡

10.11.04昭和記念公園

10.11.04昭和記念公園

10.11.04昭和記念公園

10.11.04昭和記念公園

補足

サザンカは、ツバキ科の植物で、日本特産である。山口県萩市を北限とし、四国南西部、九州全域、沖縄県西表島まで自生している。サザンカの自生種(原種)は、6弁程度の花弁を持つ白花で、秋の深まりとともに咲き始め、暖かい地方では年内に咲き終わる。サザンカは江戸時代から園芸化が始まり、江戸を始め、熊本など各地で栽培されるようになった。サザンカの園芸品種は、現在300品種ほどあると言われているが、開花時期や花の特徴から次の三つに分類される。
(1)サザンカ群
 花色などから一部ツバキとの交雑が推定されているものの、形態、生理的にはサザンカの自生種(原種)に近い品種群である。花は一重咲きまたは二重咲きで花の形は自生種によく似ているが、花色は白のほか紅色や桃色などもある。花期は10月から12月である。
 御実衣(おみごろも)、三国紅(みくにこう)
(2)カンツバキ群
 サザンカとツバキの交雑種の「獅子頭(ししがしら)、関東では寒椿と呼ぶ」の実生またはその後裔の品種群である。八重咲きや獅子咲きの品種が多く、華やかな花を咲かせる。開花時期はサザンカ群よりも遅く、11月から翌年3月である。
 獅子頭(ししがしら)、不二の雪(ふじのゆき)、乙女山茶花
(3)ハルサザンカ群
 サザンカとツバキ(主にヤブツバキとその園芸品種)との種間雑種及びその後裔の品種群である。花の形態は一重咲き、八重咲き、千種咲きなど様々で、花色は紅色及び桃色の品種が多く、白花の品種は少数である。開花はカンツバキ群よりもさらに遅く、12月から翌4月である。
 鎌倉絞り、銀竜

小説の木々

紅いふちどりに、白い花弁、黄色の花芯。紫がかった赤の花びら。今を盛りと咲き誇る山茶花。見上げれば、高層ビルに囲まれた小さな空が、高く遠く彼方に見える。どこからともなく、湿った土と黴くさい臭気。目の端を、何かが横切った。がさがさと落ち葉を踏む音がして、やがて静まる。野良猫でも通っていったらしい。山茶花の生垣と、日の当たらない路地。生垣の無かい側は、おミツさんが経営する美容院の、ところどころに亀裂が入ったモルタル塗りの外壁。そして、生垣の向こうにあるのは、猫石さまの石像が立つお社だった。(「私がいないクリスマス」加藤元)

人がごったがえすバラックを抜けて埃っぽい道を歩く。畑が広がり、武蔵野の雑木林が現れる。青空がやけに広い。ハヤが泳ぐ小川を渡り、白い漆喰塀の寺の先、古びた民家の前で停まる。小さな庭に低い山茶花の垣根を廻らした平屋だ。白い割烹着の女性が洗濯物を取り込んでいる。(「彷徨う刑事」永瀬隼介)

娘をつれて島村の家の横を通ると生垣にさざん花が咲き始めていた。私の好きな花である。咲く季節のせいかもしれない。戦争のためにこの世の光を見ないで失われた子供達のことを私はふとあわれむ一方、戦争のあいだにも流れ去った私の生をまた悲しみながら、私のそれがなにかに生まれ変わってくることはあるだろうかと思った。(「掌の小説/さざん花」川端康成)

そこは和風の庭。ブロック塀に沿って山茶花の木が並んでいる。志摩子の目は、山茶花の赤い花を見つめている楊だった。庭の隅に、かなり大ぶりの桜の木があり、裸の枝が塀の近くまで伸びている。(「午後二時の証言者たち」天野節子)

住宅街の狭い道に入ると除雪が充分ではないので、雪に足を取られて歩きづらい。ときどき足首まで雪に埋もれながら進んで行くと、やがて遠くに赤いものが点々と見えてきた。ぐるりと家を囲んだ生垣の山茶花が満開だ。雪の中、花が血の染みのようだった。・・・母は雪の積もった裏庭で生垣の手入れをしていた。咲き終わって見苦しくなった山茶花の花をひとつずつ毟り取り、竹で編んだザルに入れている。俺に気付いて顔を上げたが、なにも言わずにまた花に眼を戻した。(「紅蓮の雪」遠田潤子)