ウメ(梅)

別名 
科属  バラ科サクラ属
学名 Prunus mume

性状
落葉小高木
葉の分類
互生、単葉、広葉、切れ込みなし、鋸歯あり
類似
備考

参考: 葉っぱでおぼえる樹木(柏書房)/日本の樹木(山と渓谷社)/樹に咲く花(山と渓谷社)

樹形

12.03.13東京都薬用植物園

樹木解説

葉は互生し、長さ4-9cmの倒楕円形または楕円形で、先端はとがる。ふちには細かい重鋸歯がある。両面と葉柄に微毛がある。花期は2-3月、葉に先立ち、白、紅色、淡紅色の花を開く。花弁と萼片は5個。雄しべは多数で花弁より短い。雌しべは1個で子房に密毛がある。果実は直径2-3cmの球形で表面に密毛が生え、片側に浅い溝がある。6月頃黄色に熟す。

09.01.12上福岡

15.02.21新宿御苑

09.04.05秩父

12.06.30東京都薬用植物園

09.07.05上福岡

10.02.09五反田

12.03.13東京都薬用植物園八重寒紅

16.02.23花と緑の振興センター一重寒紅

15.02.15神代植物公園白難波

15.02.15神代植物公園八重海棠

15.02.15神代植物公園中国野梅

15.02.15神代植物公園台閣梅

小説の木々

ふと、闇の中にかすかな芳香がただよっているのを感じた。道にそった塀の中に梅の樹があるのだろうか。寒気のことにきびしい冬で、桃も花ひらいていい時節なのに、まだ蕾のままだという。が、ようやく寒さもゆるみ、夜気が春めいている。大事を明後日にひかえているのに気持がくつろいでいるのは、酔いだけではなく春らしい夜気のせいだ、と思った。(「桜田門外ノ変(下)」吉村昭)

うつむいて歩いていた私は、目の前に何かがひらひらと落ちてきたことに気付いて顔を上げた。目の前に梅の木があった。落ちてきたのは白い梅の花びらだった。私は立ち止まってその木を見上げた。毎日その下を通っていたはずなのに、なぜか今まで花が咲いていたことに気付かなかった。それとも一晩で一気に花開いたのだろうか。今満開のその野生の木は山の途中に生えていた。広がる枝は私の頭上に花を開く。風が弱まると微かに匂った。(「花盗人」中脇初枝)

梅が満開になる頃、母親は近所の神社までひとりで散歩に出かけた。だが長いことベッドの上で過ごして、足腰の筋力が思った以上に衰えていたのだろう。クリーニング屋の前で派手に転んでそのまま起き上がれなくなり、見たかった梅も見られず救急車で病院に担ぎ込まれた。(「骨風/今日は はればれ」篠原勝之)

古木の紅梅が二三輪開いたのを、掘炬燵に向い合って眺めながら、父と母が言い争っているあの紅梅は何十年も同じ下枝から花が咲きはじめる、あの古木はお前が嫁に来た時から少しも変わらない、と父は言う。そんなことは覚えていないと、母は言う。父の感懐に母の添って来ないのが父は不服らしい。嫁に来てから梅などを見ている余裕はなかった、と母は言う。お前はうかうか月日を過ごして来たのだ、と父は言う。老梅の寿命にくらべて人間の生命の短さを思う父の感懐は、これで腰を折られたらしい。(「掌の小説/紅梅」川端康成)

伸びをして濡れ縁に向かい、ゆっくりと腰を下ろして、そろそろ摘み取らなければならない梅の実に目をやった。去年は三斗以上も穫れて、方々に配った。ほどなく貞次郎がやってきて、並んで座り、そろそろ梅を摘み取らなければならんな、と言った。手伝ってくれるか、と問うと、むろんだ、と答えてから、つづけた。(「つまをめとらば」青山文平)

がま口から硬貨を取り出し、百円の拝観料をおさめる。境内へ入ると、本堂前の梅の木に紅白の花が咲いている。雛あられみたいでかわいらしい。目を閉じて息を吸い込むと、ふわりと甘い香りが体の奥に流れ込んでくる。こんなに寒くても、春は一歩ずつ近づいているのだ。(「ツバキ文具店」小川糸)

この庭もやはり昔と変わらない。お藤が何より好きなのは、隅にたたずむ梅の古木だった。大きくないが枝ぶりがよく、枯れた風情に味わいがある。・・・すでに実も終わり、葉だけになった梅の枝が、秋の風に揺れていた。(「九十九藤」西條奈加)