樹木解説
高さは10-15mになる。樹皮は暗灰色でやや光沢があり、小枝には微毛がある。葉は互生し、長さ5-10cmの長楕円形で洋紙質。先端は鋭くとがり、ふちには細かい鋸歯がある。4月頃、前年枝から総状花序をだし、直径5-7mmの花を多数開く。花序は長さ5-10mmで、花序枝には葉がつかないのが特徴。花序枝に葉がつく同属のウワミズザクラと区別する。花弁は5個、雄しべは12-20個あり、花弁より長い。果実は卵円形で黄赤色から紫黒色に熟す。
10.05.02小石川植物園 |
14.04.17筑波実験植物園 |
10.05.02小石川植物園 |
16.06.23小石川植物園 |
小説の木々
幼馴染の山脇貞次郎が、屋敷の庭にある家作を貸してほしいと言ったのは、上野の御山の犬桜がほころび始めた頃だった。根本中堂の西に根を張る犬桜は、かっては山内で最も早く、立春からふた月も経てば咲き始めたものだが、文化も十一年となれば、めっきり老いて、三月も末にならないと花弁を見せない。あるいは、名桜と謳われた犬桜もそろそろ寿命かと気になって、深堀省吾が久々に御山へ足を向けたとき、まさにその老木の下で、長く無沙汰していた貞次郎にばったり出逢ったのだった。(「つまをめとらば」青山文平)