サルスベリ(百日紅)

別名 ヒャクジッコウ
科属 ミソハギ科サルスベリ属
学名 Lagerstroemia indica

性状
落葉小高木
葉の分類
対生、単葉、広葉、切れ込みなし、鋸歯なし
類似
備考

参考: 葉っぱでおぼえる樹木(柏書房)/日本の樹木(山と渓谷社)/樹に咲く花(山と渓谷社)

樹形


12.09.09森林公園

樹木解説

高さは3-9mになる。幹は滑らかで、淡褐色の薄い樹皮がはげ落ちたあとが白い。葉は長さ3-8cmの倒卵状楕円形で全縁。7-9月、枝先の円錐花序に直径3-4cmの紅紫色または白色の花を次々に開く。花弁は6個で丸くしわが多く、基部は急に細くなる。萼は6裂する。雄しべは多数あり、外側の6個が長い。雌しべは1個。さく果は直径約7mmの球形。

08.11.01上福岡

09.06.21上福岡

15.07.07上福岡

09.06.27上福岡

09.07.26上福岡

16.10.20花と緑の振興センター

16.10.20花と緑の振興センター

09.11.09分倍河原

矮性サルスベリ
チカソー、サマー&サマー、サマーフラッシュ、サマーフリル等々品種は多種

12.07.14森林公園

12.07.14森林公園

12.07.14森林公園

小説の木々

我が家の玄関脇にはサルスベリの木があり、その背丈はブロック塀より一メートルほど高く伸びている。私が紀代子の両親に初めて挨拶に訪れたとき、一番に出迎えてくれたのはこのサルスベリの木だった。夏になると細かな赤い花をつけ、その蜜を求め、朝からアゲハチョウが飛んでくる。その花の下で丸いビニールプールを出し、子どもたちに水遊びをさせたことを思い出した。もしも本当に別れるようなことになり、この家を手放すことになれば、赤い花を見るのもこの夏が最後かもしれない。そう思うと妙に切ない。(「こちらの事情」森浩美)

前日の送り盆に、思い切って布海苔と小麦粉で髪を洗い、風呂を頂いて、髪結いを呼んだ。それだけで半日以上が過ぎてしまったが、夜具を片づけ、茶殻で拭き清めた座敷につくばって、結い終わった丸髷に気に入りの笄を差し、ふっと息をついて、まだ咲き誇りつづけている庭の百日紅の花に目いmをやると、早く明日が来ればいい、と思うことができた。・・・その日もよく晴れ渡って、真夏を想わせる陽が降り注ぎ、百日紅の花弁の韓紅が薄藍の空を抉っていた。(「つまをめとらば」青山文平)

桃の入った袋をひじにさげて歩く道は都会と違って、車が少ないのに広い。背の低い街並みに沿って百日紅の並木がピンクの花を咲かせている。午後の早い時刻だが人影はまばらだ。並木のどこかで蝉が鳴き、一本の下で小さな女の子が樹上を見上げていた。昔の私と同じだ。私も百日紅のあのつるつるの幹に蝉がどうやって止まっていられるのかが不思議でならなかった。(「海の見える理髪店」荻原浩)

居間の縁側を降りたちょうど正面にサルスベリの樹があって、夏から秋にかけて赤い花をつける。今も、ピンク色の花が9月の陽射しを受けながら美しく輝いている。父は何よりこの樹に愛着があるらしかった。おそらくここに病院を開業した時に一緒に植えたからだろう。そろそろ花も終わりだろうか。根元のあたりに枯れて散った茶色い花びらが見える。最近は僕も兄の命日にしか家へ戻って来ないので、いつもサルスベリの花の終わりをこうして居間から眺めることになる。珍しく違う季節に立ち寄って、庭のサルスベリが咲いていなかったりすると、自分の家ではないような気になるくらいだ。(「歩いても、歩いても」是枝裕和)

「然臨寺は小山にあってね。山の斜面が墓所になっとるんよ。ガミさんのお墓ならすぐわかるよ。百日紅の樹を右に入って三つ目じゃけえ」翳りを宿した瞳には、百日紅の花が見えているのか、そう思わせるような、遠い目つきだった。晶子は沖に顔を向けた。「ちょうどいま。百日紅が満開の季節じゃけえ。墓所を見渡せば、どのあたりかすぐわかる。思い立ったが吉日。明日にでも行ってみんさ」(「暴虎の牙」柚月裕子)

夏の終わりの夜は蒸し暑くて、どこからか花火の匂いがした。空を仰ぐと百日紅の赤が夜目に鮮やかに映る。その向こうには小さな星が幾つか瞬いていて、明日も晴れだと言っている。酔った勢いで美晴の手を掴み、子どものようにぶんぶん振って歩く。鼻歌を歌うと美晴が笑ったから、私も笑った。他愛ない夏の一日だった。(「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ)