エゾマツ(蝦夷松)

別名 クロエゾマツ
科属 マツ科トウヒ
学名 Picea jezoensis

性状
常緑高木
葉の分類
互生、単葉、針葉、線形
類似
備考
エゾマツの葉は先が鋭く、アカエゾマツの葉は短い。トドマツの葉は先がへこむ。

参考: 葉っぱでおぼえる樹木(柏書房)/日本の樹木(山と渓谷社)/樹に咲く花(山と渓谷社)

樹形


13.04.16筑波実験植物園

樹木解説

幹は直立し、大きなものは高さ40m、直径1.2mになる。樹皮は黒褐色で厚く、不規則な鱗片状に裂ける。枝は密生し水平に広がり、円錐形の樹冠になる。葉は長さ1-2cmの扁平な線形で、先端のとがる。表面は農緑色で光沢があり、裏面は白っぽくてよく目立つ。5-6月に開花し、雄花は黄褐赤色で黄色の花粉を出す。雌花は紅紫色で枝先に直立する。球果は長さ4-8.5cmの長楕円形で、はじめ上向きでのちに下向きになる。9-10月に成熟すると淡黄褐色になる。

11.01.29筑波実験植物園

10.04.03筑波植物園

10.04.03筑波植物園

10.04.03筑波植物園

11.01.29筑波実験植物園

11.01.29筑波実験植物園

11.01.29筑波実験植物園

13.04.16筑波実験植物園

小説の木々

<倒木更新>北海道の自然林では、えぞ松は倒木のうえに育つ。むろん林のなかのえぞ松が年々地上におくりつける種の数は、かず知れぬ沢山なものである。が、北海道の自然はきびしい。発芽はしても育たない。しかし、倒木のうえに着床発芽したものは、しあわせなのだ。生育にらくな条件がからえられているからだ。とはいうが、そこでもまだ、気楽にのうのうと伸びるわけにはいかない。倒木の上はせまい。弱いものは負かされて消えることになる。きびしい条件に適応し得た、真に強く、そして幸運なものわずか何本かが、やっと生き続けることを許されて、現在三百年四百年の成長をとげているものもある。それらは一本の倒木のうえに生きてきたのだから、整然と行儀よく、一列一直線にならんで立っている。(「木」幸田文)

翌朝早く、森を歩いた。下草を踏み、エゾマツの赤茶けた幹を撫でる。梢でカケスが鳴いている。懐かしい、と感じていることに戸惑う。忘れていたのか。心はここを離れていたのか。風が吹いて、森の匂いがする。葉が揺れ、枝が擦れる。エゾマツの葉が緑のまま落ちるとき、音階にならない音がする。幹に耳を当てると、根が水を吸い上げる音がかすかに聞こえる。カケスがまた鳴く。知っていた。知っている。叫び出したくなるような気分だった。エゾマツの鳴らす音を、僕は知っている。だから懐かしのか。だから魅かれたのか。ピアノの原風景を、僕はずっと知っていたのだった。最初の楽器は、森で生まれたのかもしれない。(「羊と鋼の森」宮下奈都)