フジ(藤)

別名 ノダフジ
科属 マメ科フジ属
学名 Wisteria floribunda

性状
落葉つる性低木
葉の分類
互生、複葉、奇数羽状複葉、切れ込みなし、鋸歯なし
類似
備考

参考: 葉っぱでおぼえる樹木(柏書房)/日本の樹木(山と渓谷社)/樹に咲く花(山と渓谷社)

樹形


10.04.28神代植物公園

樹木解説

上から見て、時計方向に(右巻き)がフジ、半時計方向(左巻き)がヤマフジ。つるは長く延び他の木などに右巻きに巻きつく。葉は奇数羽状複葉で、長さ4-10cmの卵形または卵状長楕円形で、質は薄く、ふちは全縁。4-7月、長さ20-90cmの長い総状花序をだし、紫色または淡紫色で長さ1.2-2cmの蝶形花を多数開く。花序は垂れ下がり、基部のほうから咲き始める。豆果は長さ12-19cmで果皮は硬く、細毛でおおわれ、9-10月に暗褐色に熟す。

11.05.04上福岡

15.05.19日光植物園

09.04.16五反田

15.05.19日光植物園

15.05.19日光植物園

17.06.22花と緑の振興センター

10.04.28調布

10.04.28調布

樹名:ヤエコクリュウ
学名:Wisteria floribunda cv. Violaceoplena
特徴:4月下旬-5月上旬に開花。花序は25-35cm、花は濃紫色で八重の中輪。

13.05.06足利フラワーパーク

13.05.06足利フラワーパーク

13.05.06足利フラワーパーク

補足

「右巻き、左巻き議論」
 アサガオの蔓の巻き方は「左巻き」とするものと「右巻き」とするものがある。貝原益軒の書物には右巻きとしているが、植物学者のストラスブルガーがアサガオのような蔓の巻き方を左巻きとしため、日本の植物学ではアサガオは左巻きとした。ところが、物理や化学ではこのラセンの巻き方を右旋性といい、工学などネジの巻き方で先に進む方を右巻きとしている。また動物でも角や巻き貝の左巻き、右巻きは植物とは逆になっている。木原均氏は植物だけ日本で逆なのはおかしいと提唱され、現在はアサガオのような蔓の巻き方を右巻きとした。文部省検定の教科書には、混乱を避けるためか右巻き左巻きの記述はない。ヤマフジとノダフジのつるの巻き方は逆だが、根元からみるか上から見るかで左巻きか右巻きが逆になる。
 そもそも、単なる金属棒に針金を巻きつけてこれは右巻きか左巻きかを議論しても、見る端により左右は逆転する。個人的には、運動の方向の問題であり、朝顔、藤は左巻きで成長するので「左巻き」、ネジは右回転して埋め込むので「右巻き」としている。

小説の木々

窓には藤の花房が揺れていた。その紫色は、澄んだ月光に浮かんで、一層ほのかな夢のようであった。妻は夫の見下したような口振りが、自分の心の潤いにそぐわないので少し拗ねたように、「奈良公園にも藤がさいていたわ。高い杉の梢のその花の色は、ちょうど私達、若い娘同志の友情のように見えたものよ。お友達の妹は思い出せないけれど、その方の兄さんなら、私よく覚えていてよ」・・・妻はもう奈良の藤の思い出を忘れて、寝室の窓の藤の花のなかに、自分が産むであろう乳児の脣の幻を描いていた。(「掌の小説/藤の花と苺」川端康成)

山はちょうど藤の盛りだった。満開の花に覆われ、山全体が紫にかすんでいる。あたりには、むせかえるような花の匂いがたちこめていた。甘すぎて気が遠くなりそうだ、と思いながら多門はつづら坂を上った。・・「そう・紫の滝。実果ちゃんは藤の花を知ってる?小さなかわいらしい紫色の花が、葡萄みたいにさくんだよ」「...葡萄みたいに」「藤の花は葡萄みたいに房になって垂れ下がるんだ。あの山は一面に藤に花が咲くからね。遠くから見ると紫の滝みたいに見えるんだ」(「鳴いて血を吐く」遠田潤子)

藤井寺の本堂のそばにある藤棚を見て、香代子は大きく息を吐いた。感嘆と無念が入り交じったような、長い溜め息だった。「もう少し早い時期に来たかったわね。満開の藤は見事だったでしょうね」寺の名の由来にもなっている藤棚は、すでに花の時期を過ぎ、葉だけを茂らせていた。雨に濡れた葉も目に鮮やか美しいが、香代子の言うとおり、たくさんの紫の花で彩られる境内は、多くの人の目を惹きつけたであろうと思う。咲き乱れる藤の花を見てみたかったと思う傍ら、開花の時期でなくてよかったとも思う。藤棚を見ているうちに、古い記憶が蘇ったからだ。(「慈雨」柚月裕子)