36. 初夏の東北温泉巡り

JR東日本が出す東北フリーパスはシーズンオフとはいえ多いに利用させて貰っている。温泉の多い東北地方では、まだまだ行きたいところもある。という訳で、今回は、乳頭温泉、十和田湖温泉、青荷温泉と繋いで回ってきた。青荷温泉で朝湯に入っていると、ご一緒した方が、窓からの青葉を見ながら「なんとも贅沢ですな」と言う。まったくささやかな贅沢である。移動そのものも旅である。これに味を占めて帰る早々次の旅を考える次第である。

散策日
平成28年7月2日(土)-7月5日(火)
所 感
16.07.04青荷温泉(ランプの宿) この時季は桜や紅葉がなくとも 青葉若葉が美しい。八幡平は土砂降りで歩けなかったが、数十年振りに歩いた奥入瀬は爽やかな風と若葉の中、一人の勝手気儘なウォーキングを楽しんだ。一日の疲れは温泉で癒し、早めに寝て、朝は爽快に起床。そしてまた温泉。ささやかで贅沢な時間である。
7月2日(土)自宅-盛岡-八幡平-田沢湖-乳頭温泉 7,990歩(4.7km)
7月3日(日)乳頭温泉-田沢湖駅-盛岡-七戸十和田-焼山-十和田湖 34,005歩(20.4km)
7月4日(月)十和田湖-七戸十和田-新青森-弘前-青荷温泉 13,742歩(8.2km)
7月5日(火)青荷温泉-弘前-新青森-仙台-自宅 14,489歩(8.6km)

16.07.02八幡平

16.07.02ウラジロナナカマド

16.07.02オガラバナ

16.07.02ミヤマキンポウゲ

出発前の週間天気予報では、7月2日から4日間とも降水確率が50-70%で、今回は雨中ウオーキングを覚悟して雨具をしっかり用意した。2日曇天模様の中はやぶさ47号新函館北斗行きで盛岡に着き、県北バスで八幡平頂上に向かう。頂上に近づくと、今まで持ちこたえていた空から土砂降りの雨が降り始めた。ここでは約2時間の時間をみていたが、幸いレストハウスがあったので、早々に頂上散策は諦め、食堂で酒付でうどんの昼食となった。田沢湖へのバスがあと30分位になった時、やっと小振りになり、頂上への道を少し歩いてみた。ウラジロナナカマド、ミヤマキンポウゲ、オガラバナ、ミヤマヤナギ、ハクサンイチゲ等わずかにせめてもの高山植物たちに出会え、ゆっくり回るのはまたの機会とした。

16.07.02ハクサンイチゲ

16.07.02八幡平頂上パーキングから

16.07.02田沢湖

16.07.02ウツボグサ

八幡平をあとにして田沢湖に向かう。田沢湖は昔学生の頃十和田から降りてくる予定だったが、急遽予定を変更したので結局来れずに、今回初めてである。田沢湖畔でバスを降りたが、なんとも廃れた雰囲気である。田沢湖辺りは奥に乳頭温泉郷を擁し、冬のスキー場、夏の高原キャンプと、そこそこ遊ぶ場所はあると思うが、シーズンオフだからだろうか、もう少し活気があると思ったが。湖畔にノアザミ、ウツボグサが咲いていた。駒ヶ岳を背景にしたたつ子像は対岸だし、遊覧船、湖一周バスに乗る時間もなく、ここは早々に乳頭温泉行のバスに乗った。

16.07.02大釜温泉

16.07.03奥入瀬渓流

16.07.03雲井の滝

16.07.03銚子大滝

さて、今晩の宿は乳頭温泉郷の大釜温泉。口コミでは散々なところだが、乳頭温泉郷は人気スポットのようでネット予約はここしか取れない。宿泊客は20数名というところか。まあ、宿はどうあれお湯が、と最低コースの2食付き1万円を予約した。大釜温泉はかって出火で焼失し、廃校になった小学校の廃材を譲り受けて移築したとかで、その看板がある。木造校舎の名残を残すというが、建物に校舎の面影はない。新聞記事によると今後は部屋名称に職員室とか使い小学校化を考えていると記されていた。夕食の合図には小遣いさんが使うベルが鳴った。内湯、露天風呂は白濁している。なんとなく濁った方が効能があるような錯覚に陥るが、湯は悪くない。規模の大きい民宿風だが、この値段にしては食事がお粗末。夕食は稚あゆの干物焼き、きりたんぽ汁以外は山菜の和え物のようなものばかり。数人の年老いた宿の人達に愛想も活気もない。部屋名も何年何組に小学校化を徹底するとか、従業員に若い人を入れるとか、食事をもっと工夫するとかして欲しいと思うのは私だけではあるまい。雨は一晩中降り続いていた。

3日朝は昨夜の雨も上がり宿のまわりはガスっていた。一番のバスで田沢湖駅に出て盛岡に戻り七戸十和田から奥入瀬の焼山に入る。このルートの方が奥入瀬に近いし安い。奥入瀬渓流は数十年前にも歩いた。天気も回復し、汗ばむほどで焼山から子ノ口までの3里半(14km)を時折写真を撮りながら歩き始める。川に沿って遡行するので緩やかな登り路だが、目に染みるほどの若葉の中、渓流の瀬音を聞きながらの道は快適である。子ノ口でバスを拾おうと思っていたが、思った以上に時間を食い、4時間歩き子ノ口まで1.6km手前の銚子大滝で本日の最終バスを待った。

16.07.03十和田湖乙女の像

16.07.03ホテル十和田湖荘

16.07.04奥入瀬焼山

16.07.04弘前城と岩木山

今晩の宿は十和田湖畔のホテル十和田湖荘。前日の宿のイメージが残っていたので、今晩の宿は2食付き8,500円だが、部屋も食事も従業員の態度も頗るよく映った。ここでも中国の客が多かった。一方土産店は閑散としている。シーズンオフだからなのだろうか、休屋でこんなに閑散としているのは寂しいものだ。
翌朝は快晴、秋空を思わせる雲。焼山から七戸十和田へのシャトルバスは私一人の貸し切り状態、これでいいのかな。七戸十和田へ戻り弘前へ向かう。1月に来たときはまだ元の位置にあったが、城壁修理のためすでに移動されていて、仮展望台からは城と岩木山が両方見える1時間ほど弘前植物園を覗き、これに乗らないと間に合わない14時半の弘前発に乗る。弘前から弘南鉄道黒石線で黒石に、バスで乗り継ぎ虹の湖へ、そこからさらに青荷温泉のシャトルバス。僻地である。

16.07.04青荷温泉

16.07.04部屋のランプ

16.07.04健六の湯

16.07.04夕食

今回の目的の一つでもあった青荷温泉、ランプの宿。携帯は圏外、部屋には当然テレビもなく、ランプが一つ。ランプ一つの六畳間の明るさは、豆電球よりは明るい。ランプの下で今日の金勘定をした。しかし、太陽光の電卓は作動しない。本館以外に幾つか離れもあり、湯は内湯を含め四つ、食事も若いスタッフの接客もそれなりに。ここまで山奥に来ると此処だけであるから、連泊する人や外人もチラホラ、ランプの灯だけで過ごす。なお、最低限の電気(トイレのウオッシュレット、事務機器)は自家発を置いているようである。電気が来ないというハンディを逆手に取る経営方針は面白い。夕食は隣にいた二人のそれぞれ一人旅の女性客と話が進み、酒も進んだ。観光産業は女性客が一番のターゲットであるとつくづく思う。夜はランプを点けたまま就寝してくれとのことで、金勘定を終え、夜の温泉に入り早々に就寝した。

16.07.05弘南鉄道

16.07.05弘南鉄道からの岩木山

16.07.05仙台青葉城脇櫓

16.07.05トビシマカンゾウ

昨日はもっと乗っていたのに、8時半発の温泉シャトルバスには数名しか乗っていない。ゆっくりするのか連泊するのだろう。弘南鉄道の途中駅に田んぼアートという駅がある。田んぼアートのことは知っていたが、ここにあったとのは初めて知った。また来ることもあるだろう。旅の最後はいつも山が付き物だが、弘前側から見る岩木山は、実際は巌鬼山、岩木山、鳥海山の連なりである。弘前、新青森に出て途中仙台に寄った。ここでは青葉城脇櫓を左手に見て東北大学植物園に行き、幾つか見たい樹を探した。初日だけ雨であとは良い天気に恵まれた。結構忙しい旅であったが、それなりに楽しんできた一人旅であった。

<後記>だんだん秘湯に嵌りつつある。今回も弘前から電車で30分、路線バスで30分、シャトルバスで20分かけて青荷温泉を往復したが、秘湯ゆえに時間的な制約があるのは致し方がないところ。また、有名あるいは人気のある温泉宿は予約が取りにくい上に、一人客を排除する傾向がある。トップシーズンでなくて良いので、一人客の扱いをなんとかして欲しい気持ちである。