小説の木々18年01月

開け放した窓から手をのばしたら、捕まえてしまいそうだった。くもにはあたしの手が見えないのか、糸でぐるぐるまきにして真っ白になったオニヤンマに咬みついたまま、動かないでいる。高い笑い声が、巣のかかる夾竹桃の茂みのむこうに上がった。あたしは手をひっこめて、ピアノの前に戻った。(「みなそこ」中脇初枝)

「かくれみの」の読書歴

蔵書を整理した。中学校の頃から読書を始め、最初に読んだ文庫本は伊藤左千夫の「野菊の墓」だったと記憶している。確かS.Oさんから借りたものではなかったか。今から思えば、本を貸してくれたことは実は告白だったか?学生の頃は電車通学で文庫本を読んでいたが、例外なく太宰治、芥川龍之介、志賀直哉、夏目漱石あたりから始め、三島由紀夫、福永武彦、立原正秋等へといった。借りて読むのは好きではなくほとんど購入していた。三浦哲郎の「忍ぶ川」はいつごろ読んだのだろうか。しかし、家でボヤをだし、この時代の蔵書は水浸しで全部捨てた。会社に入ってからは読書の習慣がしばらく絶えて電車の中ではビックコミックを愛読していた。いつの頃からか再び読み始めているが、多少金銭的余裕もできてハードカバーも購入し始めた。気に入った本があると同じ著者物を続けて読む傾向もある。当然ながらいつの間にか本が山積みになり始めた。でも捨てきれないでいる。(本棚左下の家マークをクリックするとマイ本棚へ)

未必のマクベス(早瀬耕)★★☆☆☆

株式会社早川書房 早川文庫 第5刷 17年11月25日発行/18年01月18読了

中国語のルビが読みにくく、何度も読み過ぎた前に戻った。暗号化ビジネスの暗闇とは言え、なぜこうも簡単に殺し殺されなくてはならないのか。どうも現実感に遠い。暗闇の世界で身分証明、不在証明がなかば公然と行われる世界の恐ろしさも見える。これが恋愛小説か?

螺旋の手術室(知念実希人)★★★☆☆

株式会社新潮社 新潮社文庫 第1版 17年10月01日発行/18年01月20日読了

偶然が分かりにくくするが、連続殺人の発端も鍵もある探偵が握っていた。謎が少しずつ解明されていき、出演者の顔ぶれから途中で怪しい人物が特定されていく。最後は辛い結末に終わる。文章が少し粗いと感じた。