小説の樹々20年06月

校庭のフェンスに沿って夾竹桃が植わっている。桃色の花が満開だ。思わず目を逸らした。夾竹桃の花は苦手だ。理由は二つある。一つ目は、真夏に咲く桃色の花が暑苦しくて押しつけがましく感じること。そして、二つ目は毒があるからだ。それを教えてくれたのは父だ。この前、父と散歩していたときのことだ。ふいに父が夾竹桃を指さした。(「銀花の蔵」遠田潤子)

「かくれみの」の読書歴

蔵書を整理した。中学校の頃から読書を始め、最初に読んだ文庫本は伊藤左千夫の「野菊の墓」だったと記憶している。確かS.Oさんから借りたものではなかったか。今から思えば、本を貸してくれたことは実は告白だったか?学生の頃は電車通学で文庫本を読んでいたが、例外なく太宰治、芥川龍之介、志賀直哉、夏目漱石あたりから始め、三島由紀夫、福永武彦、立原正秋等へといった。借りて読むのは好きではなくほとんど購入していた。三浦哲郎の「忍ぶ川」はいつごろ読んだのだろうか。しかし、家でボヤをだし、この時代の蔵書は水浸しで全部捨てた。会社に入ってからは読書の習慣がしばらく絶えて電車の中ではビックコミックを愛読していた。いつの頃からか再び読み始めているが、多少金銭的余裕もできてハードカバーも購入し始めた。気に入った本があると同じ著者物を続けて読む傾向もある。当然ながらいつの間にか本が山積みになり始めた。でも捨てきれないでいる。(本棚左下の家マークをクリックするとマイ本棚へ)

孤狼の血(柚月裕子)再読★★★★☆

株式会社KADOKAWA 角川文庫 初版 17年08月25日発行/20年06月16日読了

シリーズ3編目の「暴虎の牙」を読んで、「大上が自殺した」とのところでアレっと疑問を持ち再読した。五十子会の他殺だろうが事故死で処理された。大上のトレードマークのパナマ帽は沖がやったものだった。そして日岡の持つライターは大上が遣ったもの、小道具もうまく使っている。再読で薄ら覚えだったが、緊張感はそのままに楽しめた。ついでに2編の「狂犬の眼」も再読するか。

凶犬の眼(柚月裕子)再読★★★☆☆

株式会社KADOKAWA 初版 18年03月30日発行/20年06月26日読了

前作より一回り小ぶりな感じがするが、大上の陰が大きすぎて致し方ないか。ここでもしっかり大上からもらった狼柄のライターが登場する。それにしても最後にしっかりとけじめをつけるものだ。