58. 近畿北部の灯台

 1月末に不整脈の手術を受け、無事退院できたこともあり、温泉にでも行きたいと思い、灯台巡りに合わせあまるべ温泉、城崎温泉を周ることにした。経ヶ岬灯台は「新・喜びも悲しみも幾年月(加藤剛/大原麗子主演)」の最初に出てくる灯台で、ぜひ行きたかった灯台の一つでもある。2泊三日で3灯台/2温泉巡りで、うまくまとまった行程になったと思ったが。とにかく初日の餘部埼灯台がきつかった。雪でも降ったら大変だった。

散策日
令和6年(2024年)2月12日(月)ー2月14日(水)
所 感
灯台巡りをするとき、必ず一つや二つ厄介なことが出てくる。今回天気は天任せ。最初の難点は餘部埼灯台で駅から徒歩5.1km。餘部はそこそこ知られた場所だが、無人駅で何もない。もちろんタクシーはなく、二駅前の香住から呼ぶことも難しい。ゆっくり歩いて片道2時間あればなんとかなるだろうと多寡をくくって計画した。
2月12日(月/祝)東京-(新幹線)-京都-(山陰本線)-福知山/城崎温泉/餘部-<餘部埼灯台>-餘部-(山陰本線)-香住 35,592歩(21.3km)
2月13日(火)香住-(山陰本線)-豊岡-(京都丹後鉄道)-網野-(丹海バス)-経ヶ岬-<経ヶ岬灯台>-経ヶ岬-(丹海バス)-豊岡-(山陰本線)-城崎温泉 26,746歩(16.0km)
2月14日(水)城崎温泉-(山陰本線)-福知山/京都-(湖西線)-敦賀-(常宮線バス)-立石-<立石岬灯台>-立石-(常宮線バス)-敦賀-(北陸本線)-米原-(新幹線)-東京 16,171歩(9.7km)

24.02.12新幹線の車窓より

24.02.12余部港防波堤灯台

24.02.12旧餘部鉄橋

24.02.12見上げる餘部鉄橋

 切符は都区内/餘部往復4割引き、新幹線(ひかり限定)/特急3割引きのジパングを使う。初日に4-5時間歩いて餘部埼灯台に行こうすると山陰本線餘部12:42着で行くしかないが、一番の「ひかり631」に乗って新大阪乗換では間に合わない。コース順を変えようかと、乗換案内や時刻表をアチコチみて、金土日のみ走る京都乗換の「きのさき3」を見つけた。これなら餘部着12:42/餘部発17:36でちょうど良い。翌日の経ヶ岬からのバスが平日しか走らないので、おのずから出発は日祝、翌平日となる日程に決めた。
 東京駅で朝食の駅弁と昼食を買う。天気は天任せであったが、幸い三日間よさそうである。新幹線の車窓からは富士が綺麗に見えた。
 餘部は何もないところだが、駅のある余部鉄橋は1912年(明治45年)完成した長さ310m、高さ41m、当時東洋一高い恐ろしい鉄橋。エレベータで下に降り、見上げると実に高い。1986年(昭和61年)12月28日、回送列車が風に煽られ鉄橋から転落し、死者6名を出す悲惨な事故が起きた場所である。

24.02.12灯台への海沿いの道

24.02.12ほぼ中間の道標

24.02.12餘部埼灯台

24.02.12あまるべ温泉

 駅の見学は戻ってからにして、早速灯台へ向かって歩き始める。道はダラダラと緩やかな登り道で距離5.1km、標高274m。ほぼ中間に「灯台まで1.9km」の道標があるが「鉄橋まで2.3km」合計4.2kmしかないが何かの間違いか?
 2時間弱で灯台に到着。灯台の周りは展望も良く整備されていて、桜が咲く時期はさぞ綺麗だろうと思う。20分程で帰路に就いた。今度はダラダラと下り坂道である。もともと上り坂と下り坂では使う筋肉が違う。だらだら下る坂では常時力が入ったままになる。雪でも降っていたら、あるいは道が凍結していたらさらに遅れただろう。途中で足に変調が起き、急にスピードが落ちた。痛いわけではないが足が進まない。これは大きな誤算だった。2週間前の退院でまだ復調していなかったか、年のせいで10.2kmの道程は厳しかったか、それとも荷物が重すぎたか。明日からの歩きも山道で心配になる。予定より大幅に遅れてやっとの思いで駅に着いた。余った時間で餘部駅周辺を観ようと思っていたがその余裕もなくなんとか予定の列車に乗り香住へ行った。車なら灯台近くまで行けるから難はないのだが。
 あまるべ温泉は単純温泉で、香住ガニが知られてる。残念だが繁華街もなく、とにかく何もなかった。予約した宿でまず風呂を浴び、居酒屋を探したがなかなか見つからない。ようやく一軒の店を見つけ、店主、客と会話しながら酒を飲んだ。翌朝風呂に入り、コンビニに行こうとしたが駅の反対側とのことで、香住での調達は諦めた。

24.02.13京都丹後鉄道

24.02.13中浜港第2防波堤灯台

24.02.13駐車場からの灯台

24.02.13経ヶ岬灯台

 経ヶ岬灯台は「新喜びも悲しみも幾年月」(加藤剛/大原麗子主演)の冒頭に出てくる灯台で是非行ってみたかった。香住から山陰本線で豊岡に行き、コンビニで朝食と昼食を調達。京都丹後鉄道に乗り換え網野で下車。バスの時間があったので駅前食堂で朝のコーヒを一杯。バスの車窓から中浜第2防波堤灯台が見える。バス停に着くと昨日の足の調子を考え、飲食料とカメラだけナップサックに詰め替え、リュックはバス停に残して出発した。途中の駐車場へはダラダラの上り道、20分強で到着。駐車場には何人か人がいる。駐車場から灯台の一部が見える。ここから急な山道になる。登り口に杖があったので借用した。なんとか歩けそうだ。
 20分ほど登ると灯台に着いたが、ちょっとがっかりした。灯台前に塀があり灯台はさらに一段低い場所に建って居る。これでは全体像が見えない。灯台は「ある程度距離があり、途中に障害物がなく(できれば電線も最小限で)、まわりの風景(海、空、桜とか)が映り込む場所から見るのが最高」なのだが。

24.02.13展望台

24.02.13展望台途中の道で

24.02.13京丹後市庁舎のモニュメント

24.02.13夜の城崎温泉

 欲求不満を抱えながら、それではと途中パスした展望台に淡い期待を抱えて寄ることにした。残念ながら展望台からも灯台は木の陰に隠れ見えず、わずかに展望台への途中で少し見えた。
 バス停に戻りつき、網野に戻る。途中バスの車窓から京丹後市庁舎に灯台のモニュメントを見つけた。このバスはコミュニティバスで1時間乗っても200円で安い。豊岡に戻ると城崎温泉に逆戻り。今日の宿は温泉の端にあり、着替えとタオルをもって外湯巡り。それにしてもこの宿、チェックインのとき宿泊料を払いカギを受け取ったとき以外誰にも会わなかった。食事も風呂もない。外湯が中心の城崎だから成立するか?
 七つある外湯の一つがお休みと言うので、近場から「地蔵湯」「柳湯」に入り、居酒屋を探すがメイン通りにはなかなか見つからない。やっと裏路地で見つけ、小一時間酒を飲む。女性客が多い。帰りに「一の湯」に入り半分の3つの湯につかった。どこも泉質は同じと言うからこんなもんでいいだろう。比較的熱めの湯で気持ちよく疲れが取れた。

24.02.14敦賀駅

24.02.14立石漁港の看板

24.02.14灯台登山口

24.02.14灯台への上り坂

 城崎温泉のコンビニで朝食を調達し、福知山を経て京都へ戻る。京都からは湖西線で敦賀へ向かう。敦賀は3月16日から新幹線が開通する。敦賀からのコミュニティバス(ここも片道200円)で立石に行く。この線は一日に3本しかなく、帰りのバスは立石発18:11である。7、8月であれば増便があり15:20発があるのだが、仕方なく灯台でゆっくりするしかない。
 昨日と同じくリュックサックを停留場におき、バス停から海沿いに歩く。案内板があり「クマ注意」とあるが今頃は冬眠時期だから大丈夫だろう。ネットの口コミではここらか登山口まで草茫々とあるが、今は草は枯れ難はなく、10分ほどで登山口に着き、そこから灯台まで山道を登る。 

24.02.14登山途中の案内板

24.02.14立石岬灯台

24.02.14日没前の灯台

24.02.14灯のついた防波堤灯台

 途中に「灯台までXXm」という案内板がある。珍しく途中一人のオジサンとすれ違った。立石岬灯台は枯草に囲まれていて、思いのほか存在感がった。口コミで灯台の周りにある木々が海の眺望を邪魔していると残念がっていた。確かにこれらの木々がなければ眺望がさらにいいのにナと思う。他に誰もいない、誰も来ない。酒を飲んで食事もして時間を費やした。夕刻、雲が出てきて風も少し出てきた。日の入りは5時半ごろだが、夕焼けを見るのは難しそう。それに5時半までいるとバス停に戻るころには暗くなるので、16:41には下山した。
 帰りが遅くなるので、20分ある敦賀駅で夜食を買わなければならない。少し遅れたバスを降り駅前のファミリーマートに急ぐと改装中で休み。駅に引き返し何とか酒と駅弁を買った。ホッとして列車に乗るとすぐに急停車。鹿と衝突したので安全を確認中と言う。米原でひかりに乗り換えに13分しかない。10分遅れで出発し、ギリギリ間に合った。家に帰り着いたのは真夜中になっていた。

 灯台は船の安全な航行を守ることにある。従って、灯台は海岸線で多くは岬の突端の崖上にあり、交通は不便である。当然観光目的の建造物ではないから、観光の都合など考えていない。今回行った経ヶ岬灯台はビューポイントもないが、それも灯台の機能とは関係ない。立石岬灯台も周りの木々が邪魔なのは観光者にとって邪魔なだけであるが、船から灯台が見えればいい。また木々が海上保安庁の所有でないかもしれなく、観光者のための整備は海上保安庁の仕事ではない。灯台の歴史的、文化的価値はあると思うが、それでも灯台を見に行くかは人それぞれであろう。

<後記>
 昨年夏から病院巡りで暫く灯台巡りを中断していたがまた再開した。とても観光旅行と言えるものではなかったが、やはり灯台に行きたい気持ちは止まらないようだ。次は思い切って五島列島の大瀬埼灯台に行ってみようか。移動を考えると、ある面では「乗り鉄か?」とも思えてくる。