64. 南九州の灯台

 鹿児島県にある本州最南端の佐多岬灯台は日本の灯台50選にも選ばれており行ってみたかったが、如何せん遠すぎ、なおかつ交通が不便で断念し、志布志湾を挟んで宮崎県にある都井岬灯台に行くことにした。都井岬灯台も50選に選ばれており、登れる16灯台の一つである。今回は都井岬から九州西側沿いを博多へ登って半周する5泊6日の灯台旅となった。また、南九州は12年前に知覧を主に女房とバスツアーで行った思い出の地、旅の目的である思い出巡りの旅でもある。

散策日
令和7年(2025年)04月17日(木)ー04月22日(火)
所 感
25.04.18都井岬灯台九州の都井岬灯台まで東京から1日半かかるのはさすがに遠い。細かいスケジュールは現地で調整、修正したが、乗換/中継地点で船、バスの待ち時間のため結果的に全体としてゆとりのあるスケジュールとなった。歩く距離もさほど多くなく、天候も傘を使うこともなく、まずまずであった。
04月17日(木)東京-(東海道新幹線)-新大阪-(山陽/九州新幹線)-鹿児島中央-(日豊本線)-宮崎(宮崎泊) 10,927歩(6.5km)
04月18日(金)宮崎-(日豊/日南線)-串間-(よかバス)-都井岬-<都井岬灯台>都井岬-(よかバス)-串間-(日南/日豊本線)-宮崎(宮崎泊)13,679歩(8.2km)
04月19日(土)宮崎-(日豊本線)-鹿児島中央-(指宿枕崎線)-山川-(バス)-長崎鼻-<薩摩長崎鼻灯台>-長崎鼻-(バス)-指宿-(指宿枕崎線)-鹿児島中央-(九州新幹線)-熊本(熊本泊)13,454歩(8.0km)
04月20日(日)熊本-(三角線)-三角-(バス)-江樋戸(えびと)港-(船)-湯島-<湯島灯台>-湯島-(船)-江樋戸港-(バス)-熊本(熊本泊) 20,668歩(12.4km)
04月21日(月)熊本-(鹿児島本線)-荒尾-(タクシー)-<三池港灯台>-(徒歩)-荒尾-(鹿児島本線)-東郷-(バス)-神湊(こうのみなと)-(船)-大島港-(タクシー)-<筑前大島灯台>-(タクシー)大島港-(船)神湊-(バス)-東郷-(鹿児島本線)-博多(博多泊) 20,305歩(12.2km)
04月22日(火)博多-(山陽新幹線/山陽本線)-下関-(タクシー)-<あるかぽーと東防波堤灯台>-(バス)-下関-新下関-(山陽新幹線)-三原-(船)-瀬戸田港-(レンタサイクル)-<高根島灯台>-(レンタサイクル)-瀬戸田港-(船)-三原-(山陽/東海道新幹線)-東京 22,521歩(13.5km)

25.04.17鹿児島中央駅

25.04.17桜島

25.04.17宮崎駅

25.04.17宿泊地駅前の東横INN

 朝昼の二食分の駅弁を買い、酒をちびりちびりと飲みながらホロ酔い気分で、東京発8:03ひかり503号/新大阪発11:20さくら553号と、新幹線を乗り継ぎ鹿児島中央に15:37着。ここからさらに日豊線特急で2時間かけて18:28宮崎に行く。今回の旅の初日は列車移動だけで終わってしまう。鹿児島中央も宮崎も初めて下りた駅だった。
 鹿児島中央を出発すると鹿児島湾に浮かぶ桜島が見える。12年前見たときは噴煙を上げていた。宿泊地は連泊するので、便を考え駅近くにした。飲み屋もコンビニも駅構内にあり都合がよい。

25.04.18串本駅

25.04.18よかバス

25.04.18都井岬灯台

25.04.18都井岬灯台

 宮崎から日南線で串本へ。やっとここまで来た。武田鉄矢の「思えば遠く来たもんだ」の文言が口をついて出てくる。ここからはコニュニティーバス「よかバス」で都井岬まで行く。他に客はおらず貸し切りのようなバスである。来る前はバスの終点がパカラパカなのか(灯台まで2.3km)、灯台すぐ近くかいろいろ情報があり分からなかったが、幸い灯台近くまで行ってくれた。
 都井岬灯台は日本の灯台50選に選ばれており、九州で唯一登れる灯台で、実に美しい姿をしていた。平日であるが常に車が5,6台駐車していた。灯台前に店がありそこそこの観光地だが、一軒は閉店、もう一軒も活気がなく観光客商売の難しさを感じる。

25.04.19日南線山川駅

25.04.19竜宮神社

25.04.19開聞岳

25.04.19薩摩長崎鼻灯台

 三日目は宮崎から鹿児島中央に戻り、指宿枕崎線で山川に行く。山川駅周辺には一軒食事処があったがまだ開いていない。温泉も宿泊者のみ利用可能、他には何もない。バスが来ると、普通灯台に行くバスはガラガラだが、何故か結構混んでいた。ただ話し言葉が中国語ぽい。近くに温泉も旅館もあるが、ここまで外国人観光旅行者が来るかと思う。竜宮神社前の店は半分シャッター店で2軒だけ開いていた。ここは他の灯台と異なり、めずらしく結構な観光地であり、今までになく人が多い。開聞岳は懐かしかった。ここは薩摩長崎鼻灯台で、熊本にも同じような名前の長崎鼻灯台がある。
 帰りは山川駅に戻る予定であったが、指宿からの特急「指宿たまて箱」が全車指定で結構人気があるとの情報を得て不安になり、山川で1時間待つより先に指宿に行き指定券を取ることにした。幸い指宿で指定券を取ることができ、指宿の駅前で昼食を摂った。
 鹿児島中央に戻り熊本に出る。熊本には市電が走っていて、ホテルまで少し距離があったので市電を利用できて便利だった。ホテルは繁華街の中にあり、繁華街は驚くほど盛況だった。

25.04.20三角線三角駅

25.04.20海のピラミッド

25.04.20天草四郎ミュージアム

25.04.20上天草港海江樋戸(えびと)防波堤灯台

 熊本から三角線で三角に行く。三角駅前はそれほど賑わってはいないが、駅舎がレトロで風情がある。また三角港はフェリーターミナルとして、そのシンボルの「海のピラミッド」がある。今では三角港/島原のフェリーは廃止されている。ここからさらにバスでサンパールに行き、小型船で湯島に渡る。船着き場近くに天草四郎ミュージアムがあった。

25.04.20湯島港八号号北防波堤灯台

25.04.20湯島灯台

25.04.20熊本城羊申(ひつじさる)櫓

25.04.20熊本城稲荷神社

 江樋戸(えびと)港から船で25分、湯島に着く。江戸時代初期の「島原・天草一揆」のとき、島原と天草の住民たちが集まって戦略を練ったことから、「談合島」とも呼ばれている。また、島には多くの猫がいて、「猫島」としても近年有名になっている。あちこちに猫が寝そべっていて、観光客が猫を撫でている。海沿いに15分ほど歩き階段を上ると湯島灯台がある。中型灯台であり白塔が島外れで少し裏寂しい気もするが趣がある。滞在中二組の人が来た。港に戻ったが少し時間があったので近くの音姫屋で食事をした。
 サンパールに戻り当初予定は三角で乗換るつもりだったが、快速バスが来たので直接熊本へ戻った。市電で熊本城前で下車し、復興中の熊本城へ立ち寄った。城内に入る時間が過ぎていたので、羊申(ひつじさる)櫓と復興中の天守閣の遠景を眺めホテルに戻った。

25.04.21四山神社

25.04.21三池港灯台

25.04.21神湊港北防波堤灯台

25.04.21筑前大島港避難港北防波堤灯台

 ホテルを出て鹿児島本線で大牟田へ向かった。が、途中ネットを見ていたら大牟田より荒尾からのほうが灯台に近いことが分かり予定を変更した。これは三池港で調べていたせいで三池港と三池港灯台は少し離れていたため。荒尾に着くと下調べもなかったのでタクシーに乗った。お陰で山の上まで行ってもらえた。
 三池港灯台は白塔で朝の清々しい空気の中で輝いていた。朝の散歩の人と何人か擦れ違った。帰路は階段を下りて歩いて駅まで30分かけて戻った。荒尾駅はかっての三池炭鉱の雰囲気を残していた。
 次に荒尾から博多を通過し東郷に着いた。博多のベッドタウンなのか、駅の周りには何もない。駅前のベンチで、コンビニで買った食料で昼食を摂る。予定通りの時刻でバスが来て、神湊(こうのみなと)波止場に行く。

25.04.21筑前大島灯台

25.04.21隠れキリシタンの洞窟

25.04.21砲台跡

25.04.21風車のある展望台

 筑前大島には世界遺産の宗像大社中津宮、沖津宮遙拝所があり、「神守る島」と呼ばれていて、福岡県で一番大きな島である。島での滞留時間は約2時間、港から灯台まで約5kmで時間的に歩く訳にはいかない。タクシーは島に一台、多くの人はバスかレンタサイクルを利用している。ここは奮発してタクシーを頼んだ。筑前大島灯台は四角い箱型のタイル張りで華やかさはないが落ち着いた感じである。
 灯台前の崖下に隠れキリシタンの隠れ家、三浦洞窟がある。洞窟といっても深いものではないが、道は険しい。少し離れたところに風車展望台、戦時中の砲台指揮所/砲台跡がある。なかなかの観光地で見所がある島である。
 大島から博多へ戻り、夜は博多の旧友と久し振りの酒を酌み交わし懇談でした。

25.04.22下関市あるかぽーと東防波堤灯台

25.04.22高根橋

25.04.22高根島灯台

25.04.22高根島灯台

 最終日は九州を出て芸予諸島の高根島(こうねしま)に向かう。その前に下関市のあるかぽーと東防波堤灯台(白灯台)を見に行った。関門海峡をバックに、下関外浜町防波堤灯台(赤灯台)がセットで見える。下関駅から歩くと30分くらいだが、タクシーで行ってもらい帰路はバスを利用した。これでだいぶ時間が稼げたので、東京着21:12のプランAを東京着20:12のプランBに切り替えた。
 新下関から三原まで新幹線で移動し、三原港から生口島(いくちじま)の瀬戸田港に行く。生口島と灯台のある高根島は橋でつながれており、瀬戸田から灯台まで5kmくらい。歩くには少々しんどいし適当なバスもなく、タクシーもいない。そこでレンタルサイクルを利用した。普通車1,000円/日、電動アシスト車4,000円/日で、電動アシスト車はやや高いが、帰路の高根橋を上る急坂は自転車を押して上るかと思っていたが、電動アシスト車の力で息切れもせずに登れ、電動アシストの力を改めて知った。
 高根島灯台は芸予諸島9灯台の一つで、塔高は4.85mと低いが日本の灯台50選にも選ばれている。何故このような小さな灯台が50選に選ばれているのか疑問であったが、建造以来昔の姿を留めている貴重な石造り灯台とのこと。なんだか、今回の灯台巡りで一番達成感があったような気がした。

<後記>
 今回はあまり長距離の歩きもなく、中継地で待ち合わせ時間が十分あったので比較的楽な気分で回れた。出発前は少し億劫な気分であったが、行けばそれなりに高揚感があり、すでに次の四国の灯台旅の切符も買ってある。初めは灯台そのものに興味があったが、灯台に加え、思い出、再会と、灯台旅にも深みと幅が出てきた。