公共交通機関で灯台巡り

 日本全国の灯台を周ろうと思うとき、まずその数を知る。国内の灯台は、全国で3,000基余りで、これには沿岸灯台と防波堤灯台がある。まずここから、「全部の灯台を周る」という気持ちは捨てて、「見たい灯台を周る」に変える。さらに、日本の灯台50選でさえ行けないところがある。到達できない灯台は当然ながら最初から諦める。これで100位の灯台に絞られる。ネットの記事を見ると灯台巡りのほとんどは、自家用車/レンタカー、バイクを使ったもので、それだけ不便であるということである。公共交通機関を使っていては短時日にぐるぐる回ることはできず、数を稼ぐのであれば車、バイクに頼らざるを得ない。また、灯台のあるところはいわゆる普通の観光地ではなく、交通の便がいい所とは言い難い。公共交通機関を使っての灯台巡りはとても観光旅行気分ではなく、トレッキングに近いだろうか。

 費用の多くを占めるのは交通費、宿泊費、飲食費である。まず交通費は最大限割引を使う。高齢者ならフリーパスやジパング割引、往復割引を活用する。JRの運賃計算が分かってくる。宿泊費は基本的には安いビジネスホテルだが、たまには温泉宿に奮発してみたい。都合が合えば昼間日帰り温泉に入ることもあるので、着替えの下着はその分プラスして入れておく。朝昼の食事は基本コンビニ。朝食付きのホテルもあり、これを利用することもあるが、朝の出立が早いと食事時間が間に合わない時がある。昼は灯台近くの食堂は期待できないので、基本コンビニ食。もちろん昼食を摂ることができる店と時間があれば利用することもある。夕食は私は近くの居酒屋で、酒を飲む。従って、ホテル代を浮かせても、酒代の入った夕食は安くはない。グルメと温泉は都合によりけりである。

 さて、灯台を周ろうと思ったとき、まず「見たい灯台を含む地域」を選択する。例えば青森県北部/龍飛岬灯台とか、和歌山県沿岸/大王崎灯台だとか。ネットを見ながらその区域の回りたい灯台をピックアップする。そこからパズルの始まりで、JR/私鉄鉄道、バス、船で灯台を繋いでいく。鉄道、バス、船のないところは、タクシー、自転車、最後は徒歩である。これで数泊の粗いスケジュールを作る。この大前提となるのが交通機関の定時運行である。これなくして計画はありえない。反対周りも検討に値する。時間が許せば近くの観光地、例えば城址とかを計画に入れることもある。国内には通常時、上に登れる灯台が16基ある。これ以外にも年に1、2度一般公開日を設け、特別に登れる日がある灯台もある。

 突然思い立ったから、明日からというほど簡単なことではない。天候や都合を見ながら、日程を決める。3泊4日も行くなら一日くらい雨でも仕方がない。宿泊地を予約する。時期のよっては空きがないところもある。宿泊が取れたら鉄道だが、曜日運行、季節運行に注意する。みどりの窓口かネットで予約し乗車券を取得する。最近全車指定の特急も増えてきたので注意。これで計画が確定する。

 タクシーもレンタサイクルもないところは徒歩となる。徒歩は個人差があるが、片道1、2時間程度以内がいいところか。タクシーも駅前に必ずあるのもではなく、予約ができるところは予約した方が良い。だいたい4kmで1,500円程度。ただし、計画では念のため時間の余裕を見て徒歩の時間で組む。

 灯台は多くは海沿いにあるので朝陽/夕陽で有名なところも多い。青い空、青い海、白亜の灯台もいいが、朝陽/夕陽を浴びた灯台もいい。もちろん天候にも左右されるが、残念ながら公共交通機関を使ったのでは灯台近くの宿の泊らない限りそうした風景はほとんどみることはできない。今まで岩手県の陸中黒埼灯台に行った折、朝陽を見たのが唯一である。

 旅行中よく使うスマホアプリは、乗り換え案内と徒歩ナビ、万歩計である。乗り換え案内は電車が急に運休になったとき、あるいは計画を変更する場合に有効である。徒歩ナビは灯台までの道順、到着予定時間を示してくれる。ただ徒歩ナビの歩速は4km/hくらいで私には速過ぎる。徒歩中見つけた草花を写真に撮ったりしているとますます遅れる。普段から自分の歩速を知っておく必要がある。大体一日に1-3万歩くらいか。また、灯台は海岸線の丘の上にあることが多い。徒歩ナビに従い海岸線を行って、灯台足下に来たはいいが、登り道がないときがある。予めネット情報でこの辺りの状況は調べておくとことが重要。

 いよいよ実行だが、これだけ念入りに計画しても予定通りいかない場合がある。その時は臨機応変に、計画変更の対応をするしかない。一人だとそのあたりの変更は柔軟である。観光地と一体になった灯台には、そこそこ人も出ているが、ほとんどの灯台は観光地化されておらず、人っ子一人いない場合が多い。当然ながら飲食店もない。滞在時間は30分-1時間程度か。

 船を使う場合は要注意である。灯台があるということはその周辺の海域は海難事故の起こりやすい危険水域である。大型船ならいざ知らず、小型船だと離島の灯台に行くとき、往々にして欠航することがある。街中は穏やかでいい天気でも。風が強い、波が荒い等の理由で欠航することがままある。しかも当日でないと判断できない。港に行って欠航と聞くと、その日一日の予定が大幅に狂う。そのため、予めプランBの検討も必要である。

 こうして灯台巡りをしているのだが、遠距離になってくるほどハードルが高くなってくる。費用も高くなってくる。どこまで行けるか分からないが、若いころ行った場所、妻や家族で行った場所、初めて行く場所を周っている次第である。

<追記>灯台巡りの行程が決まって、荷造り等準備を始めるが、大事なのことを忘れていた。それは今回の灯台巡りへのモチベーションである。一人旅であり、誰かと共有することはない。単に個人的な旅であるが、考えようによっては、旅に出ること自体面倒なことである。従って、準備を含めて、数日かけて徐々にワクワク感を高めていくことが旅をさらに楽しくなる秘訣ではないだろうか。
 一人旅で困ることは旅館で、多くの旅館は一人では予約を取りにくいこと。旅館側の事情も分からないではないが、一人旅への配慮も欲しい。山形県の銀山温泉は以前より行きたいところだが、何軒か直接電話もしてみたが一人では断られ、未だに行けていない。また、ほとんどの旅館は禁煙である。喫煙場所があるところはまだしも全館禁煙のところもある。喫煙者としては厳しい。ビジネスホテルは喫煙/禁煙の選択があるところもある。