灯台の魅力

21.09.11島根県出雲日御碕灯台 23年正月に友人から手紙が来た。その中に1枚の切抜き記事があった。東京新聞1月1日「近代化遺産 静かなブーム 灯台の魅力は」という記事であった。最近私が灯台巡りをしているのを知って送ってきたのだろう。初めて島根県の出雲日御碕灯台に行き、バスを降りて灯台見上げたときの美しさに感動したことが忘れられない。それ以降全国の灯台巡りをしている。新聞記事をみて、自分なりの灯台の魅力を書いてみたい。23.05.22愛媛県佐田岬灯台まず、似たような建造物に、処理場や工場の煙突や通信施設がある。何故それではなく灯台なのか。江戸時代、複雑な沿岸の地形に適当な航路標識さえなく、諸外国からは日本沿岸を「ダーク・シー」とまで言われていた。そこで諸外国は航路貿易の安全ために灯台の建設を要求した。日本の洋式灯台の第1号は、1869年初点灯した観音埼灯台である。灯台の設置場所はその役目柄もともと陸の孤島と言うべき場所だったが、そこで灯台の灯りを守る灯台守の家族の過酷な生活を強いられた。戦中の灯台守の殉職や、紀伊日ノ御崎灯台での悲劇もあった。2006年長崎県の女島(めしま)灯台が無人化され、最後の有人灯台がなくなった。近年のGPSの発達で、灯台の役割は徐々に少なくなっているようだが、こうした灯台の歴史に触れ、灯台の灯りを守り、過酷な生活に耐えた人々を偲ぶとき、灯台の暖かさや人間味を感じる。映画「喜びも悲しみも幾年月」はいい映画だった。

22.09.14新潟県角田岬灯台 昨今、静かなブームと言われる。灯台の建設場所はその役目上、多くの灯台は海岸の先端や山の上にあり、交通の便は悪く、極めて不便である。他方、景観に優れ、朝夕陽の絶景場所であるところも多い。では、灯台を建てるとそこが観光の名所になるかと言うとそう甘くもない。絶景場所に建つ灯台が、一つの点景としてその場所の魅力をさらに増すといったところだろうか。五島列島の大瀬崎灯台(未訪問)などは魅かれるものがある。さて、灯台をを巡るとき、いつも思う三つのポイントがある。

22.07.03青森県尻屋埼灯台 第一に灯台の構造、レンズ、光達距離、灯高、塔高等々、灯台自体の緒言である。洋式灯台の第1号は観音埼灯台で、設計はフランス人技師レオンス・ヴェルニー。フランス風白色八角形の煉瓦造灯台で、地上から灯火までの高さは 12.12 m 。洋式灯台の父と言われるイギリスの土木技術者リチャード・ブラントンは政府の要請で26基の灯台を設計した。灯台の多くは白色、コンクリート造り、円形または六、八角形。雪の多い場所では目立つように黒、赤の横縞模様になっているものもある。灯台の大小はレンズの大きさで区分されているが、高さが10m前後以上ある大中型の灯台の方が確実に周辺の景色に映える。日本で一番高い灯台は出雲日御碕灯台で43.65mあり、163段の階段を上る。なお、江の島灯台、大阪灯台はこれより高いが対象となっていない。

22.10.21青森県魹ケ埼灯台 第二は設置環境。東京新聞「灯台の魅力は」で、ある写真家が「私は離れたところから見るのが好き」と語っている。個人的にも同感で、これが一番のポイントだと思っている。つまり灯台を一番美しく見せるビューポイントがあるということである。灯台が木々に覆われて、全体が灯台直下からしか見られないと非常に残念な思いである。無理は承知だが、周囲が緑地化されていると居心地が良い。背景に青い空と青い海、そこに見る白亜の灯台の姿が最高だろう。

21.10.10山口県角島灯台 第三は歴史的、文化的な側面である。明治時代(1,868年~1,912年)に建造され、150年も灯りをともし続け、現役で機能している灯台は全国で64基ある。 歴史的・文化財的価値を有する文化資産的な灯台も数多くある。これからも残したい施設である。また、映画「喜びも悲しみも幾年月」「新喜びも悲しみも幾年月」「悪人」「嘘を愛する女」「NHK朝ドラ/まいあがれ」でも、灯台は重要な要素としてロケ地になっている。これらもより親しみが湧く要因だろう。