霧と靄

 灯台巡りでガスは最大の厄介者。せっかく灯台に辿り着いても、目の前にある灯台そのものがガスで見えないこともある。灯台巡りを始める前(平成27年/2015年)下北半島に行ったが、そのとき立ち寄った尻屋岬がガスで包まれ、尻屋岬灯台をまともに見ることができなかった。令和4年(2022年)再度尻屋岬を尋ね、青空の下に尻屋岬灯台を見ることができた。令和6年(2024年)五島列島の福江島の大瀬埼灯台に行った。山道を登りきると辺りはガスが出ていて嫌な予感がした。ここまで来てガスで灯台が見えないとは酷な話である。引き返す気にもならず進んだが、灯台に着くと海風でややガスが薄れ灯台を見ることはできた。ただし、展望台ではガスが晴れず定番の景色は見ることができなかった。灯台自身はみることができたので、これで一応満足して帰った。

 霧(きり)は英語で「fog」、大気中の水蒸気が凝結し、無数の微小な水滴となって浮遊する現象をいう。これは、気象庁の予報用語では、微小な浮遊水滴により視程が1km未満の状態を指し、また視程が陸上でおよそ100m以下、海上でおそよ500m以下の霧を「濃霧(のうむ)」という。

 靄(もや)は英語で「mist」や「haze」と言い、大気中に小さい水滴や吸湿性の粒子などが浮遊し、遠方のものがかすんで見える現象をいう。これは、気象庁の予報用語では、微小な浮遊水滴や湿った微粒子により、視程が1km以上、10km未満となっている状態を指す。

 霞(かすみ)も英語で「mist」や「haze」と言うが、遠くの景色がかすんで見える現象をいう。これは気象観測において定義がされていないので用いられていないが、日常的には、大気中に浮かぶ微細な水滴や微小粒子などにより遠くがはっきり見えない現象を指す。

 ガスは海上の霧のこと。最近は陸上でも「山でガスにまかれた」とか「少しガスってる」などと言うことがあるが、基本的には海霧のことである。

岬と半島

 令和6年友人の車で野母崎灯台に行った。途中車の中で「地名の野母崎のサキは山編、灯台の野母埼のサキは土編」と教えたら、初めて聞いたといい、灯台の入り口にある看板の「野母埼灯台」の文字を見て納得していた。

 国土地理院の前身である「陸軍陸地測量部」では、山へんの「崎」を使用しており、今も国土地理院の地図には「崎」が使用されている。また、海上保安庁では、「海軍水路部」の時代から、土へんの「埼」を海図に採用している。そのため、海上保安庁が管理している灯台は、名称に「埼」という文字が使われている。

「埼」と「崎」は、どちらも「さき」と読むが、使い分けがある。

  • 「埼」は、陸地が水部へ突出したところを指す。
  • 「崎」は、山脚の突出したところ(平野の中)を指す。
  • 「岬」は、陸地が海や湖に突出したところを指す。

 また、岬は、海や湖などに細長く突き出ている陸地を指す。丘や山の先端部が平地や海、湖に突き出している場所が「岬」で、夜間など視界が悪いとき、船の運航に邪魔になる可能性があるため、灯台が設置されることがある。他方、半島も海に向かって長く突き出している陸地を指す。三方が海や川、湖などの水に接している陸地で、海から見ると島のように見える。簡潔に言えば、「岬」は小さな半島であり、「半島」は大きな岬と言える。